仕立て室の小さな物語・第3話

今日は、
贈らない。

喜ぶ予定を増やさず、余力を守る日の仕立て。

空席を残した仕立て台で、予定の札を引き出しへしまい、休む余白を選ぶひより、ときさん、そうた
この物語は、ハハゴコロのために作られたフィクションです。

母の日が近づくたび、ひよりは予定表を何度も見直していました。会いに行く日。渡す物。電話をする時刻。けれど、その週の母は通院と用事が重なり、声が少しだけ細く聞こえました。

ひより

何もしないまま過ぎたら、気持ちまで渡しそびれる気がします。

そうたは、贈り物の包み紙を机の端へそっと寄せました。

そうた

受け取る日まで決めると、その日がまた仕事になることもあるよね。

ときさん

気持ちは、予定表の今日にしか届かないものではありません。休める日まで待つのも、相手の時間を信じることです。

ひよりは包みをしまい、代わりに短いメモを書きました。「返事はいらないよ。落ち着いたら、お茶でもどう?」。送る前に、最後の一文を付け足します。「今は何もしなくて大丈夫」。

ひより

今日は贈らない。でも、気にかけていることは渡せるんですね。

仕立て台の糸は、急いで結ばれませんでした。窓のそばでゆるく輪になり、次に会う日のための余白を残していました。