仕立て室の小さな物語・第2話
選んでもらうのは、
手抜き?
答えを用意するより、選べる余白を渡す日の仕立て。

ひよりは、三つの候補を書いた紙を折っては開いていました。お茶の時間。少しだけ手伝う日。母が好きな物を一緒に選ぶ日。どれも悪くないのに、最後の一つだけ、手を止めてしまいます。
ひより
選んでもらったら、私が考えていないみたいに見えませんか。
ときさんは、仕立て台の引き出しを三つ、少しだけ開けました。中身は空です。
ときさん
空にしておく引き出しも、相手のために用意するものですよ。
そうた
欲しい物を聞くんじゃなくて、選んでいい場所を渡すんだ。
ひよりは、紙のいちばん下に小さく書き足しました。「どれも違ったら、なしでも大丈夫」。選べることには、断れることも含まれていると気づいたからです。
- 一緒に30分、お茶を飲む
- 今週、用事を一つ引き受ける
- 好きな消えものを一緒に選ぶ
ひより
決めてもらうためじゃなくて、気楽なものを選んでもらうために聞いてみます。
ときさんが引き出しを閉じると、三本の糸は一つに結ばれず、それぞれ違う色のまま、机の端まで伸びていきました。